宝石のように目を惹く美しさと、花のようにやさしく広がる香り。
「YURAM」は、視覚や香りといった五感を通して、目に見えるものと心で感じるもののあいだにある“神秘”をかたちにするアートブランドだ。
2019年にハンドメイドとして活動を開始し、2021年に法人化。
その歩みの背景には、代表の伊藤 すみれさんとCOOの小國 里穂さんが大切にしてきた直感と、目標に向かって積み重ねてきた行動がある。
二人のこだわりの詰まった宝石石鹸は、使う人の感覚に静かに働きかける。忙しい日常の中で、思考から少し離れ、感覚に立ち戻る時間。
YURAMは、その小さな余白を大切にしている。

自分の直感を信じ抜く
初めて出会った宝石石鹸の美しさに、伊藤さんは強く心を惹かれたという。
「石鹸なのに、こんなに美しいものは見たことがないって思ったんです。だけど、私なりの表現でもっと抜け感のあるデザインが作れそうとも感じて、さっそくキットを買って作ってみたんですね」
自分の感覚を手がかりに制作を始め、minneやCreemaで販売を開始。想像以上の反響があり、直感は少しずつ確信へと変わっていった。
転機となったのは、初めてのポップアップ初日だった。その朝、夫の経営している会社が多額の負債を抱 えることになったという連絡が入る。
「本気で取り組んではいたけれど、どこか守られていた自分がいた。その支えがなくなった 瞬間、死に物狂いでやらなければならないフェーズに切り替わったのと経営の厳しさを目の当たりにした」
毎日どうすればいいのかわからず、不安の中で過ごしていたという。
その場に立ち会っていたのが、高校時代からの友人である小國さんだった。
「泣いていたけれど、小國が一緒にいてくれて、笑えた瞬間もあった。一瞬、状況を忘れられたんです」
一方で小國さんはそのとき、このブランドは必ず成長すると直感したという。

「絶対に大きくなるべきだし、一緒にやらなきゃいけない。使命とか宿命って言ったらいいんですかね。今までにない感覚でした」
こうして二人は、YURAMを本格的に育てていく覚悟を固めていった。
「どう在りたいか」を問い続ける姿勢
伊藤さんは、高校生の頃から「会社をやりたい」と思っていた。
「自分の考えを、自分で形にしたかったんです。誰かの指示で動くより、自分の問いに向き合い続けたかった。中学生の頃、母親から勧められた本をきっかけに、自分を見つめ直す時間があって。このままで人生を終えていいのか?っていう問いをずっとしてきたんですね」
大学卒業後は金融機関で働き、結婚を機に退職。ホワイトニングサロンの経営にも挑戦したが、どこか感覚が重ならなかったという。
「感覚的にはこう生きたいのに、何をすればいいかわからなかった。でも、宝石石鹸に出会って、すべてが重なった感覚がありました」

一方、小國さんもまた、早くから自立を意識していた。
進学校に通いながらも、親の反対を押し切って専門学校へ進学し、その後アパレル企業に就職。結婚、出産を経て、望んでいたはずの日常を手に入れたあと、ふと疑問が浮かぶ。
「もう自分のやりたいことはやりきった。でも、このままでいいのかなって。自分が欲しかった日常に、満足できなくなっていたんです」
二人に共通していたのは、環境や肩書きではなく、「どう在りたいか」を問い続けてしまう性質だった。その問いが、YURAMという場で、ひとつの方向へと合流していく。

感覚をひらき、循環させる
YURAMは、自らを「アートブランド」だと定義している。そこに込められているのは、装飾や流行ではなく、感覚に重きを置く姿勢だ。
「私たちは、目に見えるものと、目に見えないものをつなぐ役目をしたいと思っているんです」
YURAMが大切にしているのは、見た目の美しさだけではない。使うこと、届けること、その過程においても誠実であることだ。
一つひとつを自分たちの手で作る道もあったが、制作と経営を両立させ、世界に届け続けることを考えたとき、自分たちが担うべき役割を見直す必要があった。
「こんなに工程が多いものは作れませんと何十社からも断られました。それでも、やっと一社、私たちの思いを丁寧に汲んでくださったんです」
現在は、価値観を共有できる工場と対話を重ねながら、自分たちの描いた表現を、安定して届ける仕組みを築いている。

原料も、できる限り国内産にこだわって選定している。品質だけでなく、日本のものづくりや産業を循環させたいという思いがあるからだ。
「お金を得ることが、人生の目的ではないよね、ってよく話すんです」
大切にしているのは、結果よりも過程。そして、得たものをどう循環させるかという視点だ。
YURAMがギフトに重きを置くのも、その延長線にある。贈り物を受け取る人だけでなく、選んでいる時間そのものを、豊かなものにしたい。
「誰かを想う時間って、すごく尊い。その時間に、そっと寄り添える存在でありたい」
視覚や香りといった五感を通して、心に余白を生む。YURAMの宝石石鹸は、そのための“使えるアート”なのだ。